ライジンさんという方が、ご自身のアトピー新薬治療の経過などをYoutubeで発信されているのを見て、アトピーの新薬を使って治療している人同士で意見交換できるようなコミュニティを作りたい、というような話に共感しました。
もちろん、どの薬も統計的な試験結果が発表されているわけですが、まだ新しい薬を使うときに製薬会社自身が出しているデータをどこまで信用していいものなのかという問題もありますし、実際に新薬を使っている人たちの声を聞けるのは有意義であると思います。
ただ僕のTwitterアカウントは、アトピー情報の発信用に使っているわけでもないですし、あまり知人たちに心配をかけるのも本意ではないので、こちらのBlogに僕の治療の経緯などをまとめてみたいと思います。
僕の年齢は、2022/10/9現在38歳で、現在アトピーが悪化していて辛い思いをしています。
幼少期~新薬治療開始まで
細かい経緯などは覚えていませんが、僕は昔からアトピー持ちで、小さい頃からよく皮膚科に通っていた記憶があります。
おそらく中学生くらい?で一回軽快し、乾燥肌で白い粉が落ちてしまうというような問題以外は一旦、解消されました。
それが再発したのは20歳のときのことで、当時の彼女がどうしてもというので、猫アレルギーの僕が猫と同居せざるを得なくなったのがきっかけです。
それ以降は、標準治療で保湿クリーム、ステロイド、プロトピック等を使うことで悪くなったり、良くなったりを繰り返す日々が続いていました。おそらく、軽症~中等症の部類ではないかと思います。ちなみに、抗ヒスタミン薬もずっと処方されてきましたが、効いていると思ったことはありません。
25歳のときから2年間、アメリカに留学しましたが、アメリカに住んでいた時期はアトピーがずいぶん楽になっていたのが不思議でした。ほとんど保湿クリームだけで過ごしていたように思います。
もしかしたら水の違いなのかなと思って、塩素除去系のシャワーヘッドなどを試してみたこともありましたが、現在では塩素はあまり関係ないことがわかっていると、日大板橋の先生がおっしゃっていました。
アメリカ在学中にあった出来事として、咳が2ヶ月くらい続いて出るようになってしまい、それは現在まで季節的に咳が出始めるとしばらく治らないということが続いています。これは後に咳喘息であると診断を受けました。
日本に帰ってきてからはまたアトピーは悪くなったり良くなったりを繰り返します。
そんな中、34歳(2018年)くらいのときにアトピーの新薬、デュピクセントが開発されたというニュースをネット上で目にすることになりました。試験のデータを見ると、相当期待できそうでしたが問題は費用です。
月に大体3~4万円程度のコストがかかるようでした(僕は所得の関係上、高額療養費制度が適用されません)が、アトピーが本当によくなるのであればそれくらいは受け入れるかと思い、払うことにしました。
デュピクセント治療期
2018年の秋、僕はいつも行っているクリニックに紹介状を書いてもらい、
近くの病院でデュピクセントを試したい旨を伝えると、とりあえず検査を受けることになりました。そのときの検査結果を載せておきます。


デュピクセントというのは、IL-4/13によるシグナル伝達を阻害し、アトピー性皮膚炎の病態に深く関与するTh2型炎症反応を抑えるバイオ製剤で、2週間に1度自己注射することでアトピーの炎症や痒みを抑えます。
製薬会社が発表している試験結果でも、大きな効果があるということで話題となりました。
https://www.dupixent.jp/atopy/property/02
デュピクセントは僕が使い始めた当時は小さい注射のような形状で、自己注射するために病院で注射の仕方などの指導を受けましたが、途中からはペン型の形状に変わりました。
効果はてきめんで、打ったその日のうちに効果を実感し、数日のうちに痒みを感じることはほぼなくなりました。
肌もきれいになって、それからしばらくはとても快適で、高いお金を払っただけの価値があるなという実感を持っていたように思います。
ただ、そのうちにデュピクセントでいくつか不満な点がでてきます。
- 痒みはそれほどないものの、顔に赤みが残る
- 目が結膜炎になる
- 徐々に効果が落ちてくる
顔の赤みについては、自分ではそれほど気にしてませんでしたが、ヒゲの脱毛をしにいったときに頬に赤みがあるためにレーザー脱毛ができない、というようなことが何度もありました。デュピクセント使用前までは普通にレーザーを打てていたため、やはり風評通り、顔の赤さは出てしまう特徴があるのだと思います。
次に、目が赤くなり眼科で目薬をもらってもなかなか治りが悪いというようなこともありました。これもデュピクセントの主な副作用としてよくあげられるものだと思います。
そして最後に、これがもっとも困ったことだったのですが、デュピクセントをはじめて1年、2年と経つうちに効果が明らかに落ちてきて、また痒みがでるようになってしまいました。ダイエットのためにプールで水泳をしたりしてましたが、その際に指が荒れてしまって水作業をするときに痛い、というようなこともありました。
デュピクセントは打ったりやめたりを繰り返すと抗体ができる、などという話がありますが、僕の場合はずっと打ち続けてましたが効かなくなってしまったことになります。
2018年の11月に打ちはじめ、違う薬に切り替えたのが2021年の10月くらいなので、3年くらいデュピクセントを使い続けましたが、痒みがまたでてきたところでJAK阻害薬という新しい錠剤タイプの薬がでてきたため、そちらに切り替えてみようと思い、デュピクセントを中断しました。
リンヴォック治療期
デュピクセントを打っていた病院の先生に、リンヴォックを試してみたいという話をしてみたところ、うちだとまだ扱えないから、大きな病院を紹介してあげるということになり、東京の日大板橋附属病院を紹介されました。
日大板橋の先生は最新の医学的エビデンスなどへの知見も深く、
検査をした上でさっそく使ってみようということになりました。JAK阻害薬で使用可能なオプションとして、リンヴォックの他にも効果が弱めのオルミエントというものもあるという話を聞いた上で、やはりリンヴォックを試してみようということになりまずは検査をすることになりました。
その時の検査結果がこちらです。

当時の検査結果をみると、TARCはデュピクセントをはじめたときの1154から413まで下がっており、効果が落ちていたといってもまだ効いていたということなのかもしれません。
またデュピクセントを中断するにあたって、咳喘息でお世話になっている内科の先生にやめても問題はないか一筆書いてきてもらってきてほしいというような依頼もありました。デュピクセントは喘息にも作用することがあると言われているため、中断すると悪化するおそれもあるからです。
デュピクセントを始める前から同じように咳喘息の吸入薬は使っているため、特に問題ないということで正式にリンヴォックを開始できることとなりました。
リンヴォックは錠剤タイプの薬で、毎日1錠ずつ服用します。
リンヴォックの効果はものすごく、服用をはじめて数時間のうちに痒みは収まり、何日かで肌の炎症もきれいになりました。
顔の赤みもなくなり、デュピクセントを使っていたときは行けなかったヒゲの脱毛なども問題なくすることができて、たぶん僕の人生の中でももっともアトピーというものと関係のない時間を過ごすことができたのではないかなと思います。
しかしうまい話はないもので、その時間も長くは続きませんでした。
リンヴォックを開始して3ヶ月ほどが経とうとしていた1月、右手の親指と人差し指の間になにか湿疹ができていて、ついにはひび割れしてしまって痛いというようなことがありました。
それとほとんど同時に、発熱の症状があったため、近くの内科医にいくとおそらく指の炎症からバイキンが入ったのではないかと言われて抗生剤を服用しました。
指も痛かったので近所の皮膚科(日大板橋病院は遠いし週末だったのですぐには行けなかった)に行ってもバイキンかなということでガーゼのようなものを巻いてもらうなどで診察を終えました。
しかし、不安を感じたため週明けの月曜日に日大板橋の先生に観てもらいにいったところ、リンヴォックの副作用によるカポジ水痘様発疹症と診断され、即入院することになります。
カポジ水痘様発疹症はアトピーと合併することの多い病気で、免疫力が弱った体に通常はすぐ治るはずのヘルペスが全身感染することによって引き起こされる病気です。
カポジ自体は、適切に抗ウイルス薬を点滴または経口摂取することで比較的短期間で治る病気ではありますが、ヘルペス自体をやっつけることはできずに神経細胞や皮膚に隠れているため、何度も再発するケースも多く厄介な病気です。
また、入院中はリンヴォックを飲むのをやめることになったためにアトピーの症状なのか、指が腫れてしまい痒くて大変でした。このときから、JAK阻害薬をやめた瞬間に猛烈な痒みに襲われるという現象にも悩まされることになります。
ついでに不幸は続くもので、この6日間の入院中にコロナに感染するというトラブルもありました。
とりあえずカポジは一旦治癒したので体の痒みをとるためにリンヴォックを再開しますが、これから何回もカポジは再発を繰り返します。
ただ、家に抗ウイルス薬を常備しておくことで、ヘルペスの症状が出始めると抑えることはできるため、なんとかなることはなるのですが、抗ウイルス薬もあまりたくさん処方してもらえるわけでもないため、気になったときに飲むようにしているとすぐなくなってしまい、面倒です。
また、さらなる悩みとしてリンヴォックの効きもそれ以来少しずつ落ちてきて、また痒みもでてきていました。何回もヘルペスになりながら、痒みもでてくるなら何のために高い金を払っているのか?ということになるため、また日大板橋の先生に相談したところ、それではオルミエントを試してみようということなります。
リンヴォックとオルミエントはどちらもJAK阻害薬に分類され、効果は似ているものの少し機序が異なるらしく、リンヴォックがJAK1というものを阻害するのにたいして、オルミエントはJAK1とJAK2を阻害するらしいです。
こう聞くと、オルミエントのほうが効果が強いのではと思ってしまいそうなもんですが、効果としてはオルミエントのほうがマイルドだが、リンヴォックよりも副作用が弱いというのがオルミエントの特徴です。
藁にもすがるように、オルミエントの治療がはじまります。
オルミエント治療期~今
オルミエントは、最初からあまり効きませんでした。
それでも、飲まないと猛烈な痒みに襲われるので飲むのですが、痒みも炎症も残ります。
ただ、海で紫外線を浴びてしまったときを除いて、ヘルペスに悩まされることは減りました。
ですので、僕の実感としても、弱いリンヴォックがオルミエント、というような印象です。
デュピクセントやリンヴォックを通じて、何らかの抗体ができてしまったのか、あるいはカポジ発症などを通じて急速にアトピー自体が悪化してしまったのか、原因はよくわからないのですが、飲まずに猛烈な痒みに耐えるか、飲んで多少の痒みに耐えながら大金を払い続けるか、悪魔の2択を迫られるようになってしまいました。
オルミエントをやめて、デュピクセントに戻してみるなども試しましたが、やはり効きません。
日大板橋の先生は、また新しい薬がどんどん開発されているから、抗体ができたら新しい薬に乗り換えて凌ぐのも手、というようにおっしゃっていましたが、ベースのアトピー自体がそうした免疫を抑制することを繰り返すことで悪化しないものなのか、いままでの経緯を考えると不安もあります。
ということで、それでもオルミエントに頼り続けると海外旅行などにも行きづらいし、とりあえず離脱してみようと思って痒みに耐えているのが今現在の僕、ということになります。
もともと中等症程度、ということでしたが今はもう少し悪化しているのではないかと思います。そのうちTARCをまた検査してみようかな。
アトピーについて思うこと
僕はアトピーとは昔からの付き合いだったため、あんまりそのハンディキャップについて考えたことがなかったのですが、日大板橋の先生にはじめてお会いしたときにおっしゃっていた話がとても印象的だったのを覚えています。
アトピーは勉学や労働の生産性を著しく損ない(5割程度)、人生に支障をきたす程度が大きいため、ヨーロッパのいくつかの国ではアトピーの治療はすべて無料で受けられることになっている、というお話でした。
たしかに、アトピーのせいで集中力が損なわれるというようなことはあるし、僕の睡眠障害もおそらくアトピーによるものが大きいので、たぶんこれまでの人生でそれなりに大変な思いをしてきたような気もしますが、一般的にそれだけ影響の大きな病気なのだと実感しました。
それでも日本の医療システムは全世界の中ではマシな方に位置づけられるはずですし、これからの高齢化社会を考えれれば日本も無料にすべき!とはなかなか言い難いものもありますが、僕たちはこれだけのハンデを持ちながら戦っているのだなあ、というような気持ちになりましたね。
新薬の治療をはじめてから、もう4年が経とうとしているので、月額4万円*48ヶ月を単純計算するだけでも200万円に近い費用を払ってることになりますし、さらには通常の薬の費用なども考えると人生における総負担額も莫大なものになるでしょう。
健康とは、普通の体とは、それほどまでに価値が高いのだと痛感します。
まあでも、僕たちは配られたカードで戦うしかないのだし、病気以外の部分できっと、他の人よりも得していたり、幸運だったりする部分もある(ちなみに僕の友人の1人は白血病により29歳で死亡しました)のだから、今回ライジンさんのYoutube発信をみて患者同士でがんばろうな、みたいな気分になりました。
今後、アトピー治療の体験談等で、お役に立てることがあるのであれば、協力させていただきます。
Twitterの知人たちにあまり心配をかけたくないため、Twitterにこの記事のリンクを貼るということはしませんが、こちらに僕のツイッターのリンクは貼っておきますね。
この記事は、僕の治療歴を医師等に説明する際にも便利な資料になりそうですので、今後なにか進展があり次第、更新していこうかなと思っております。それでは。